インタビュー:細田 和宏

エンジニアから文具屋へ——研究者が問い続ける「働く意味」

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よろしくお願いします。まず、会社の全体像を教えていただけますか。

細田 和宏

文祥堂オフィスファシリティーズという文具・オフィス家具等の卸をしている会社です。グループ会社として文具店のインクポットを運営している文祥堂、また卸ではなく文具・オフィス家具のBtoB納品業をしているトビアス情報機器という会社があります。それぞれ自分が立ち上げたものではなく親から引き継いだ形ですね。

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ご自身はもともと全く違う分野にいらっしゃったんですよね。

細田 和宏

そうですね。大学が工学部で院まで行き、その後ICカードや読み取り装置の研究開発をしていました。四年ほど働いてから実家に帰ることが決まってからメーカーの営業職に転職してもう四年ほど働いていました。

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どんな研究をされていたんですか?

細田 和宏

ざっくり言うと非接触通信に必要なアンテナの開発をしていました。チームでICカードやICカードの読み取り装置を開発する中で、読み取りエラーがおきないようアンテナを調整する感じです。当時はICカードやICタグが世の中に適用され始めた時期で、ICカードで車の鍵を開けようとしていたり、ペットボトルキャップにアンテナとチップを内蔵させようとしていたり、使い方含めて色々手探りでしたね。

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それでなぜ山梨に帰ってきたんですか?

細田 和宏

実家の家業を継ぐためです。親からお前の仕事はお前で探せ、と言われたので理系の大学、研究者としての仕事を選びましたが、その後親に会社を継がないかと言われたので帰りました。・・・と言うととても自主性が無い感じですね。まあ家業は置いておいて、山梨が好きでいずれ帰りたいと思っていたんですが、そのチャンスを与えられたので飛びついた感じです。

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帰ってきてから、「自分がこう変えてやる」みたいな気持ちはありましたか?

細田 和宏

まずは実家ではありましたが地方の中小企業って何やってるんだろう、という感じでしたので、おかしいとか変えてやるみたいなものは正直なかったですね。

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2018年に社長になられてから、最初にぶつかった壁はどんなことでしたか?

細田 和宏

社長とは何をすべきか、ですかね。先代から引継ぎいだ際に反乱がおきることもなく大きな壁にあたることもなく就任させてはもらったのですが、放っておいてもこの先10年安泰だという業態でもないですし、働いてくれている人たちに何を返せるか、自分の存在価値を作っていくのかというところがマネジメントの経験不足もあって苦労したなと思います。

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インクポットのお客さんの中心はどんな方ですか?

細田 和宏

開店以降、ずっと30代~の女性が多いですね。最近はシールブームもあって家族連れが増えてます。ちなみに売れ筋No.1は筆記用具です。

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自社商品を作るとか、コラボとか、そういった方向性は考えていますか?

細田 和宏

まだ無いのですが、地元の企業さんとコラボした筆記具を製造中です。ただ、自社商品ではなくてメーカーの既製品に印刷なりチャームをつけるなりしたものになりますが。 山梨って人口少ない県なのもあって、オリジナルの文具って殆どないんですよね。需要や楽しさを掘り起こしていけたらなと思ってはいます。

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社員さんとの関係について、経営者としての役割をどう考えていますか?

細田 和宏

スタイルがプレイヤー兼社長ではないので、役割は社員のサポートかなと思っています。総務部みたいな書類仕事と言うより環境づくり、現場で働く人がここで働いてよかった、なんなら働くのが楽しいと思える場を作っていくことができたらなと。

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「働くことが楽しい」という話、すごく根底にある信念のように聞こえます。

細田 和宏

いや、一日8時間働くとすると、したあとの人生1/3くらい働く訳じゃないですか。単純に、その時間が苦痛なのって人生自体が楽しくならないよなと思うんです。でも全く働かずに生きていけるかというと大半の人はそうでもないでしょうし、個人的には社会に認められたいからFIREできてもそれはそれでなんか楽しくなさそうだし。信念というよりはただ充実した人生を送りたい、他人にも送って欲しいというだけですかね。 その中で、自社はオフィス環境を提案できる会社でもありますし、少しでもその人生の1/3のありようを変えられればなとは常日頃思っています。

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青年会議所にも参加されていましたよね。どんな経験でしたか?

細田 和宏

辛く苦しく、楽しい経験でした。様々なコミットを求められて大変だったり反発心が沸いた時期もありましたが、生業の外で全力を出して責任を果たすという経験に意味や価値を見出すことができました。途中でやめてたら多分今文句ばかり言っていたと思いますので、40歳卒業までやり切ったからこそ良い経験だったなと言えてるところはあります。

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JCを通じて海外のつながりもあるとか。台湾に行かれたり、かなり動き回っているんですね。

細田 和宏

台湾は、JCで2019年に山梨の子供を姉妹都市かつ姉妹JCがある高雄に連れていくという事業があって、そこで関わった方々と親しくなりました。日本国内にせよ他国にせよ、異文化に触れることは自分個人としても文具店をやっている会社としても価値があると思っています。なんなら全社員フランスの展示会とかに送り出したいんですが、ちょっとそういった余力はないですね・・・。でもそこを目指せたらなと。

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お子さんはいらっしゃるんですか?ついでほしいという気持ちはありますか?

細田 和宏

中学生と小学生の二人がいますが、仕事を継いでほしいかというと迷いますね。人生に選択肢はたくさんあったほうが楽しいと思っているので。自分同様、実家を継ぐ前提が無い中で、最終的に同じ仕事をしたいと思ってもらえたら嬉しいですけどね。

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最後に、これからこの会社をどんな会社にしていきたいですか?

細田 和宏

先ほど触れた、「働くことが楽しい」という価値、それを提供できる会社にしたいです。ついでに会社じゃなくて社会もそうしていけるようになりたいですね。社員には価値を提供するだけではなく、その価値や恩恵を最大に享受できる、「ここで働いてよかった」と思える、そんな会社にしていきたいなと思います。